<アフターレポート>
NebulaShiftでアフタークラウドを拓く。
Cloud Experience Anywhere
2024年3月19日(火)SCSK株式会社主催のオンサイトセミナー「NebulaShiftでアフタークラウドを拓く。Cloud Experience Anywhere」が大手町ファーストスクエアカンファレンスにて開催されました。
開催概要
主催:SCSK株式会社
共催:レッドハット株式会社
日本ヒューレット・パッカード合同会社
日時:2024年3月19日(火) 14:00~16:30
会場:大手町ファーストスクエアカンファレンス
はじめに
SCSK株式会社 ITインフラ・ソフトウェア事業本部 サーバ・ストレージ部 部長 南部 圭
2023年12月13日にSCSKは「NebulaShift」という新サービスを発表しました。このサービスは、お客様のDX推進やクラウドネイティブのアプリケーション開発をより深く支援するサービスです。
本セミナーでは冒頭にNebulaShiftをより具体的に説明し、後半はNebulaShiftのサービスの中でも重要な要素であるSCSKのアジャイルへの取り組みについてや、弊社がアジャイル分野でどのような支援を提供できるかをご紹介したいと思います。
また、レッドハットの手塚様、日本ヒューレット・パッカードの金澤様からは「アフタークラウド」をキーワードとし、これまでパブリッククラウドの利用を進めてきた企業が、様々な理由からオンプレミスの活用を改めて視野に入れて今後のシステムのあり方を検討するケースが増えてきたニーズをふまえ、レッドハット社と日本ヒューレットパッカード社がどのようなビジネス戦略を描いているかを皆様に共有させていただきます。
企業のクラウドネイティブ化をリードするNebulaShift
SCSK株式会社 ITインフラ・ソフトウェア事業本部 サーバ・ストレージ部 課長 奥 浩史
企業にとってDX推進はビジネス成功の重要な要素の一つとなっています。一方で、
DXを推進するには素早く市場にサービスやアプリケーションを投入し、フィードバックを得てサービス内容を柔軟かつ迅速に軌道修正していくことが求められています。そのためITインフラには次のような要素が求められています。
・スピーディに開発、リリースするために「作らない」開発をすること
・変化に迅速に対応できるよう「小さく作って素早くリリース」できるようにすること
・事業成長に合わせて柔軟に拡張できること
・データをもとにした意思決定ができること
そこでSCSKは、アジャイル開発の定着やアプリケーションのモダナイズなど、お客様のクラウドネイティブ化を実現するサービス「NebulaShift」を提供しています。
主なサービスは次の3つがあります。
(1)アジャイル開発の取り組みを成功に導く教育や「伴走型」の技術支援サービス
(2)既存のアプリケーションのモダナイズを支援するサービス
(3)コンテナ基盤からミドルウェア領域までのフルマネージドサービス
これらを「クラウドネイティブ」という軸で統合しサービスとして提供していきます。クラウドネイティブとは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、あるいはハイブリッドクラウドといった、多様でダイナミックなインフラ環境において、増え続けるコンピューティングリソースを管理する技術のことを指します。SCSKはNebulaShiftを通じて、ビジネス領域からアプリケーション、ミドルウェア、コンテナ基盤、そしてお客様との共創、伴走支援までトータルにサービスを提供します。
NebulaShiftは中核となる考え方に「アジャイル」を掲げ、パートナーとしてレッドハットやHPEとの協業も進んでおります。たとえば、レッドハットの「Open Innovation Labs」サービスを通じたアジャイルコーチの強化や拡充などもNebulaShiftを通じて提供可能です。
アジャイル開発については、SCSKの最大の強みであるアプリケーション開発領域に開発標準プラットフォームを採用し、標準化された開発プロセスによる品質向上と効率化を実現します。
そして、アプリケーションの実行基盤になるミドルウェア領域ではレッドハットと連携し、お客様のシステムマイグレーションやアプリケーションのモダナイズを支援するサービスも揃っています。さらにコンテナ基盤、ハードウェアプラットフォームの領域では、HPEとのパートナーシップのもと、「HPE GreenLake」をベースにハードウェアからミドルウェアまでを月額料金で提供するスキームにより、フルマネージドサービスが提供可能です。
これにより、「アジャイル開発を導入したいが、どのように始めてよいかわからない」「自社だけでは人的リソースの観点で取り組めない」といったニーズや、「アプリケーションのモダナイズやマイクロサービス化を支援して欲しい」「コンテナ化を進める上でハイブリッドクラウド環境を利用したい」いった課題に対応します。
さらに、ITインフラ運用をフルマネージドサービスとしたことで、お客様はコア業務やDX推進に注力することが可能となります。SCSKはNebulaShiftを通じ、今後もクラウドネイティブなサービスを拡充し、お客様のDX推進をサポートしてまいります。
Cloud Experience Any Whereの実現
~アフタークラウドの『あたりまえ』をOn-premでも~
レッドハット株式会社 テクニカルセールス本部 エコシステムソリューションアーキテクト部
シニアエコシステムソリューションアーキテクト 手塚 由起子 様
レッドハットでは、「クラウドが完全に浸透し、全てがクラウドになる世界」を「アフタークラウド」と定義しました。そして、最初の問いとして「あらゆるサービスにおいて今お客様に価値を提供する源は何か?」を考えてみます。
この答えは「アプリケーション」でしょう。我々コンシューマーはアプリケーションを通じてサービスを受け対価を支払います。一方でアプリケーション提供に必要なインフラは重要ではあるものの、コストセンターであるためアプリケーション開発に集中できるよう、どんどん抽象化が進んでいます。
クラウドが台頭し抽象化がさらに進み、ITインフラを自分で構築そして運用できるスキルがなくてもアプリケーションを容易に開発、提供することが可能となりました。
続く問いは、「アフタークラウドの時代にITインフラにもたらした根本的な変化は何か?」という問いです。これは、「作らずに使う」世界が誕生したことです。使った分だけお金を払う「Pay as You Go」の世界が到来しました。
VUCA時代(Volatility / 変動性、Uncertainty / 不確実性、Complexity / 複雑性、Ambiguity / 曖昧性)といわれ、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しい中、「Pay as You Go」の考え方は重要です。需要があるのに提供できないという機械損失や、不要なインフラを保持することによるムダなコストを排することができるからです。
3番目の問いは「ITインフラが抽象化され使いたいときに使えるようになれば、アプリ開発者は開発だけに集中できるか?」です。この答えは残念ながらノーです。というのも、開発したものは運用し続けることが、エンタープライズの世界では当たり前だからです。
では、4番目の問いとして「運用業務を標準化、自動化しアプリ開発者もハッピーになる技術はあるのか?」を考えてみたいと思います。答えはイエスです。そして、これを担うのがKubernetesという技術です。
アプリケーションの運用の課題には共通点が多々あります。Kubernetesはアプリケーションとその下層のインフラレイヤーの運用を切り離し、どんな環境においてもアプリケーション運用を標準化、自動化することができます。
5番目の問いは「クラウドが進展すればオンプレミスは不要か?」という問いです。この答えはノーで、アプリケーションやデータに関する要件から今後も企業のITにオンプレミスは必要な存在であり続けます。そこでオンプレミスでも、「Cloud Experience Anywhere」を実現することが重要となります。
最後の問いは、「オンプレミスでCloud Experience Anywhereを実現するにはどうしたらよいか?」という問いです。この答えこそ、「Red Hat OpenShift + SCSK HPE」のソリューションです。Red Hat OpenShiftは、運用標準化、自動化を担うKubernetesをコアエンジンに、エンタープライズ基盤において必要となるサービスがセットとして提供されるものです。
さらにNebulaShiftのように、Red Hat OpenShift をマネージドサービスとしてご提供します。「HPE GreenLake」と連携し、オンプレミス環境でCloud Experienceを実現するサービスとして提供できます。
そのうえ、アジャイルなアプリケーション開発を支援する伴走型の支援サービスが「Red Hat Open Innovation Labs」です。これにより、お客様の要望に応じてアプリケーション開発だけに集中できる環境が実現されます。
今後もRed Hatは、SCSKやHPEといったパートナーと連携・協業しながら、フルマネージドサービスとして「Red Hat OpenShift」を提供し、お客様がエンドユーザーに価値を供与することにリソースを集中できるよう支援してまいります。ぜひ、クラウドの“あたりまえ”をオープンソースとNebulaShiftで“どこでも”享受してください。
ITプラットフォームもCloud Experience Any Where
~HPE GreenLake Edge-to-Cloud Platformで実現~
日本ヒューレット・パッカード合同会社 パートナー・アライアンス営業統括本部
パートナー技術部 部長 金澤 光 様
HPEでは、SCSKとともに、NebulaShiftに取り組んでいくにあたって、HPE Japanの事業方針である「Leading Edge to Cloud Company」との融合を狙っています。これは、エッジからクラウドまでを本当の意味で密に連携させることです。
パブリッククラウドであれ、オンプレミスであれ、ITインフラを「HPE GreenLake Platform」上で“クラウド”のように透過的に利用することが可能になります。これにより、インフラは抽象化され、企業はITインフラの運用管理から解放されます。
「HPE GreenLake」のサービスは大きく2つに分類できます。1つは、「HPE GreenLake Platform」と呼ばれる統合ポータルをご利用頂ける点です。例えばHPE GreenLake Platform上に配置される「GreenLake Central」にて、オンプレの機器だけでなくパブリッククラウドも含めたリソースの利用状況やコストを可視化できます。
2つめが、必要なハードウェアをお客様が指定するデータセンターにお届けし、従量課金でシステムを提供しつつ、オンプレミスでもクラウドエクスペリエンスを提供する仕組みです。
HPE GreenLakeがSCSKのNebulaShiftと協業、連携することの意義について、SIerであるSCSKとは、HPE GreenLake、ならびにHPE製品の豊富な実績、ノウハウを長期間蓄積してきました。また、SCSK自身のクラウドサービス、データセンターにもHPE GreenLakeを通じてハードウェアを調達、導入実績を数多く有しており、最も信頼するパートナーの1社です。
さらに、「盤石な開発基盤・開発力との融合」もポイントです。ミドルウェアの階層に強みを持つRed Hatと、開発力に強みを持つSCSKと協業、連携することで、HPEがアジャイル開発でクラウドネイティブなシステムを作り上げる一端を担えるものと考えています。
そして、「展開力」にも期待しています。今後は、情シスのみならず事業部門(LOB)がDXの担い手となります。アプリケーションに価値を持たせて収益を挙げるLOBに対し、アプリケーションの開発力を展開する意味では、SCSKに大きな期待を持っています。
HPE、レッドハット、SCSKの3社の強みを生かしたコラボレーションが、お客様にとってのメリットになることは間違いないと確信しています。
3社一体となってこれからも最適な提案そして運用を行ってまいります。
SCSKの考えるアジャイル支援のあり方
SCSK株式会社 技術戦略本部 アジャイル推進部 アジャイル推進課 石井 孝之
アジャイルという開発手法は、クラウドでのアプリケーション構築に親和性が高いと考えています。また、人材育成や開発チーム組成、経営における意思決定といった部分でもアジャイルの考え方は有効だとの認識が広がっており、アジャイルの考え方はNebulaShiftというサービス全体に通底する考え方となっています。
そのポイントは次の3点です。
・短期間でリリース
・提供する価値を重視
・フィードバック
アジャイルは、1〜2週間のサイクルで開発サイクルを回していきます。このため、お客様に提供する価値を起点に優先順位を考える必要があります。そして、プロダクトとプロセス両面で、フィードバックを得ながら改善を繰り返していくのです。従来のウォータフォール型のような、要件定義に時間をかけて精緻に組み立てる手法と異なり、常に変動する環境、ゴールに向かって柔軟に、迅速に軌道修正することが特徴です。
NebulaShiftにおける『伴走型』アジャイル導入支援サービスは、あくまでお客様が自律してアジャイルを実践するのを支援するもので、伴走のポイントは次の3点です。
・人と組織のマインド変革
・MVP(Minimum Viable Product)の実践
・長期的な取り組み
具体的なサービスメニューは、導入前の「コンサルティング」から「人材育成支援」「立ち上げ支援」「コーチング」に至るトータルなメニューで構成されます。たとえば「立ち上げ支援」では、アジャイルの目的を明確にし、助走期間を設け、既存の業務にアジャイルの要素を適用する取り組みを行い関係者の理解を深めていきます。
そして、最も重要視してるのはチームビルディングです。変化に強いチーム、自律して活動できる強いチームを組成することが重要なポイントとなるからです。一般的な立ち上げスケジュールは、1〜2週間程度ですが、お客様のビジネス要件に応じて柔軟に対応していきます。
具体的な支援事例には、約9カ月かけて伴走支援した事例があります。この事例では、一つの開発アイテムにチーム全員で取り組むスウォーミング(Swarming)を伴走期間の最後の方に取り組みました。通常、スウォーミングは、メンバーが自発的に取り組める状態になってはじめて実施できるからです。一方、他の事例では、チームに自律的なマインドを持ったメンバーが多かったため、初期段階からスウォーミングに取り組んで成功した事例もございます。
このように、チームの状況を見ながら柔軟に支援をしていきます。
アジャイル開発の手法には、トヨタ生産方式(TPS)のアプローチが使われていたり、「アジャイル開発」の一手法である「スクラム」の源流は一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏の論文にあったりと、日本にも縁の深い考え方だといえます。その意味で、今後は小規模な成果を継続して積み上げてくアジャイルな仕事の進め方は、日本でも広く浸透していくものと考えています。
ぜひ私どもと一緒にNebulaShiftというサービスを通じてアジャイル導入を成功に導いてください。